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「恵みの森」における空間放射線量について

2015年10月29日(木)
2015年11月11日、2013年のミズナラ検査情報追加
筑波大学農林技術センター八ヶ岳・川上演習林

 「恵みの森」は2015年10月10日より一般開放され、きのこや山菜も個人で楽しむ範囲であれば自由に採っていただけることになりました。 この一般開放にあたって構内における空間放射線量を測定しましたので、その結果を報告します。


要約

 恵みの森14ヘクタールの構内223か所において空間放射線量を測定したところ、平均値は0.101マイクロシーベルト(μSv/h)、最大値は0.188マイクロシーベルトでした。 この値は、一般人が1年間に浴びてもよい被ばく限度量(1mSv/年,国際放射線防護委員会 2007)を1時間当たりに換算した0.19μSv/hを下回っていますが、 この地域のもともとの自然放射線量よりは多くなっています。

調査方法

 調査地は恵みの森14ヘクタールの全域としました。地理情報システム(ArcGIS 10.1)を使って25メートル間隔の測定点223か所をあらかじめ決めました(下図)。 実際の測定の際には調査地点情報を導入したGPS(ガーミンGPSmap 60CSx)と印刷した紙地図を持ち歩いて、できるだけ正確に調査地点に立つようにしました。 調査地点が建物内に設定されていた3か所については、直近の建物外で測定しました。


 測定は2015年10月27日と28日の2日間に1名の調査者(藤岡正博,筑波大学生命環境系准教授,八ヶ岳・川上演習林長)が行いました。両日とも調査時の天候は晴れでした。
 測定には簡易測定器GAMMA-SCOUT(ガンマスカウト,ドイツ製)を用いました。ガンマ線のみを測定するモードに設定し、地面からの高さ1mで水平に維持して計測しました 。各地点において30秒間隔で方向を変えて3回測定・記録し、その平均値をその地点の値としました。正面90度1m以内に木や建物がない方向を向けました。 電波を発する機器は測定値に影響する可能性があるため、携帯電話・無線機は持ち歩きませんでした。

調査結果

 223か所での平均値は0.101マイクロシーベルト(μSv/h)、最大値は0.188マイクロシーベルト、最小値は0.050マイクロシーベルトでした。 この他に建物周りの雨水マス付近などでも任意測定しましたが、上記の最大値・最小値の範囲を超える場所はありませんでした。
 測定値を5段階に分けて地図にしたところ、場所による強弱はあるものの、建物との関係や樹林タイプ、微地形などと関係するような傾向は見られませんでした(下図)。

考察

 自然状態での空間放射線量にはもともと地域差があります。経済産業省所管の国立研究開発法人である産業技術総合研究所では 自然放射線量の地図を公表しています。
 この地図によりますと、野辺山地域の自然放射線量は0.0178-0.0360マイクロシーベルトの範囲に入っています。したがって、今回計測された値(平均0.101マイクロシーベルト) は、もともとの自然状態の数倍程度となっており、福島第一原発事故の影響を受けているものと考えられます。
 なお、上記の地図に示されているのは1999年から2003年に採取された岩石中の放射性物質の量から計算されたもので、 さらに採取されていない地域について計算で補間して地図化しています。詳しくは 日本地質学会の解説をご覧ください。
 国際放射線防護委員会(ICRP)は一般人(一般公衆)が1年間に浴びてもよい被ばく限度量を1mSv/年としています。この値を1時間当たりに換算すると0.19μSv/hとなり、今回の測定値は最大値でもこの基準値を下回っています。つまり、恵みの森で24時間365日過ごしても外部被曝量は1mSv/年の基準値を超えないということです。
 ただし、私たちはさまざまな経路から放射線を浴びていますので、その経路の一部からの被爆がやや増えているということは言えるでしょう。 自然および人為的な放射線については、例えば、 文部科学省が提供する放射線副読本をご覧ください。

 今回調べたのはあくまで簡易測定器による空間放射線量です。長野県では 山菜やきのこなどの放射線量 についても公表していますので参考になさってください。
 特にきのこ類は放射性物質を取り込みやすいので注意が必要です。今年は間に合いませんでしたが、 来年の秋には恵みの森で出た自然および栽培のきのこについてサンプル調査を実施して結果をこのページで公表する予定です。
 なお、恵みの森では一般開放前の2013年(平成25年)11月5日に構内できのこ栽培用に採取したミズナラについて筑波大学アイソトープ総合センターにて放射能強度測定を実施しています。その結果、ヨウ素とセシウム134は検出せず、セシウム137は2.4±1.7Bq/kgでした。この値は、日本でもっとも厳しい基準が適用されている飲料水や乳幼児食品の10ベクレルよりも十分に低い値です。また、筑波大学農林技術センターでは筑波地区において2011年から2014年に空間放射線量を測定し、その結果を 論文として公表しています。

謝辞

 今回の簡易測定器は地元の野辺山区会より貸与していただきました。特に同区会の成瀬豊氏には貸与の便をはかっていただきました。ここに記してお礼申し上げます。

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